モ  モ  タ  ロ  ー


「佐藤さん、今度の土曜日、モモタローお願いします」 家近くの自治会館前で声をかけられた。

「まあ、毎日暇だし、良いですよ。」

“モモタロー”とは、いわゆる選挙用語で、数人が候補者名を連呼しながら辻裏を練り歩く例の選挙運動である。何時頃、誰が名付けたのか知らないが、旗を先頭に歩く姿が“昔話の桃太郎”に似ているからだと言う。
今回は、地元の衆議院議員候補者の応援をして欲しいのだという。

地元といっても、実は、つい数件先のご近所に代議士宅がある。 謂わば、“おらが街の代議士先生”である。
確か、先生は7年前から代議士のはずである。しかし、企業団地兼住宅地の中の同じ様な構えの家並みにあり、たまに黒塗りの車が止まっている以外は、それ程目立ったことも無いことからか、住民の多くはあまり意識も無く、中には知らなかった人達もいる程である。(それは、君だけだ!と言われそうであるが)

小泉内閣のもとで衆議院が解散し、11月9日が投票日であったが、その前日の土曜日、自治会館に集まってきた30数人の人達を見て驚いた。どう見ても、熟年、いや還暦世代の男性と奥様連中に見える。“桃太郎”も年をとったものである。

時間が来ると、司会者から簡単な説明があり、男女組み合わせた6人単位の班に分けられた。ハチマキとメガホンを渡され、ついでに、連呼の口上が示された。

「地区の皆さん。明日の投票日には(リーダー)」・・・「平川、平川博英(仮名)をよろしくお願いします(全員)」

30分程、担当地区を練り歩いた後、平川候補が最終演説会場にしている交野市駅前にバスで移動した。最終演説が終わった夕暮れの駅前で解散となった。

考えて見れば、集まった人達は、つい数年前まで高度成長期をひた走ってきた企業戦士とその奥様達である。日々の企業活動に追われ、選挙応援どころでは無かった様に思う。
定年退職し、やっと“おらが街の代議士先生でも応援してみようか”という余裕が出てきたのではないかと思う。

翌日、選挙の投票も終わった午後9時頃、“熟年桃太郎”たちは、三々五々自治会館に集まった。いつもは、家で一人で見る選挙速報を、皆で自治会館のテレビで見ながら、候補者達の勝敗を肴に大いに盛り上がった。
因みに、平川先生は、他を寄せ付けず、圧倒的な差で3期目の当選を果した。

午後12時近くになって、選挙事務所でのバンザイとインタビューを終えた平川先生も、夫人共々自治会館に立ち寄った。又、乾杯のし直しとなった。

モモタロー効果の程は分らないが、自分達の応援のせいで勝った様な気分になった。



第43回衆議院選挙の投票所ともなった自治会館




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