新幹線の出会い


12月半ば、本当に久し振りに新幹線で東京へ出張した。

最近、仕事の依頼は皆無であるが、私が審査員の登録をしている東京の法人の年1回の審査員全体会議に出席するためである。



 私は、会社在職中は、仕事の関係上、月に何回かは新幹線で東京に出張していた。

大抵は、東京の会議に出席するため、朝7時前の新大阪発の新幹線で往き、夜20時前後の東京発の新幹線で帰る日帰りの出張だった。


      
          (歴代の山陽・東海道新幹線)


新幹線での往き帰りには、必ず数人は知っている人に出会ったものである。  出会った人とは、殆どは挨拶する程度であり、会話を交わすこともなく座席に着くと直ぐ眠るのが常であった。



それでも、年に何回かは懐かしい友人や知人に車中でばったり出会って、東京駅や新大阪駅に着く迄の間話し込み、昔の話で盛り上がるのも楽しみの一つであった。

しかし、私の場合困ったことが一つあった。 懐かしい人に出会っても、顔は直ぐ分かるのであるが、名前が中々思い出せないのである。

親しそうに声を掛けてくれた人に、たとえ思い出せなくても、“お名前は?”とか、“どちら様でしたっけ?”などと云うのは失礼かと思い、名前を聞くのが憚られた。

そんな時は、相手の話に相槌を打ちながら、それとなく、今日の行き先・今の仕事などを聞き、10分もすれば知人の名前も所属も思い出し、その後は親しく名前を呼ぶことができたものである。

しかし、一度だけ最後まで全く分からなかったことがある。

名古屋を少し過ぎたあたりで、トイレに立った時に声を掛けられた。

 「佐藤さん、本当に久し振りですね〜。 今日は東京へ出張ですか。」

見覚えのある顔なので、空いている隣の席に座り込んで、話すことにした。

いつもの様に、相手の話に相槌を打って、問いかけながら記憶をたどってみた。

 「今日は、どちらへご出張ですか。」    「私も東京です。」

 「今は、どんなお仕事をなさっていますか。」    「相変わらずです。」

  ・・・・・・

話してみても、簡単な応えが返ってくるだけで、知人の名前や所属を思い出すヒントとなる話は中々出てこなかった。

 名古屋から東京まで2時間近く話しても、相手の名前も、自分の会社の人なのか、他社の人なのかさえも思い出せなかった。

結局、思い出せないまま、「また、新橋で一緒に飲みましょうね。」 などと云って、東京駅八重洲中央口で別れてしまった。


      
                  (東京駅)

 その知人の名前は、残念ながら、未だに思い出せないままである。



 今回の東京出張は、会社時代と異なり仕事で疲れていることも無く、新幹線に乗っても、ちっとも眠くならなかった。

誰か知っている人に出会わないかなと願ってみたが、在職していた会社のバッジを付けた人達は多く見かけたが、往き帰り共知っている人に出会うことは全く無かった。

出張時間帯の新幹線の中で、全く知っている人に出会わない事実に、現役を引退してからの時の流れを感じさせた東京出張であった。

      (H19.12.11)



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