桜の花も散った4月中旬に、平成の玉虫厨子を見に、奈良県斑鳩町にある法隆寺に行ってきた。 毎年行われる春季法隆寺秘宝展が、今年は3月20日から(6月末まで)開催され、飛鳥時代の持国天像など国宝2点、鎌倉時代の善女竜王像など重要文化財18点のほか合わせて75点が展示されていた。 しかし、75点の展示品の中で、秀逸の一品は、何と言っても平成の玉虫厨子である。 国宝にしても、重要文化財にしても、他の作品は、千年以上の時を経て黒ずんできており、残念ながら、飛鳥・平安・鎌倉時代の名工達が作った当時の輝きを知ることはできない。 因みに、国宝 玉虫厨子は、推古天皇が仏具として使用していたとされ、約1400年前 飛鳥時代に制作されたものである。 透かし具の下などにタマムシの羽が使われているが、全体が黒っぽくなり、当時の色彩は残っていない。 その点、平成の名工が復元した平成の玉虫厨子は、タマムシの羽の青色など多くの色を配して、色彩が豊かであり、飛鳥時代の名工の素晴しい技を彷彿とさせるものであった。 法隆寺に伝わる国宝の玉虫厨子を、岐阜県高山市の中田金太さんが中心となって、日本の伝統工芸品の職人を集めて復刻プロジェクトを立ち上げ、5年の歳月をかけて復元した。 透かし金具の細工や高蒔絵(たかまきえ)など、総勢約4000人の職人が参加したという。 復元したのは二基で、一基は飛鳥時代の技法で制作し、もう一基は高蒔絵など現代の技法を用いて制作した。 平成の玉虫厨子は高さ約2.3メートルである。 二基に使用したタマムシの羽は約4万3000枚(約2万1500匹)で、2ミリ幅の短冊状にして張り付けたとのことである。 法隆寺は、丁度 春の修学旅行シーズンであり、各地の中学生が見学に訪れて大賑わいであった。 |