お く り び と


3月末、今話題の日本映画初のアカデミー賞受賞作品“おくりびと” (外国語映画賞、主演 本木雅弘、監督 滝田洋二郎)を、大阪・梅田ピカデリーに観に行ってきた。

どうして米国アカデミー賞が受賞できたのか、興味を引かれたからである。

しかも、映画の舞台となっている山形県庄内平野は私の故郷でもある。

映画はテレビやビデオで観るのに慣れてしまっているので、私が映画館に足を運ぶのは実に30数年振りのことである。 映画館は、話題作であり しかも日曜日でもあったので、満員の盛況だった。


 “おくりびと”とは、遺体に死化粧を施して棺に納める納棺師のことであり、映画のあらすじは、次の通りである。

              
          (パンフレットの表紙)              (映画のシーンのカット)


(第一場面)

 東京でオーケストラのチェロ奏者をしていた主人公小林大悟(本木雅弘)が、急に楽団が解散になって、演奏家への道をあきらめ、妻美香(広末涼子)を連れて故郷の山形へ帰って新たな職を探す。

(第二場面)

 求人広告で好条件の職(“旅のお手伝い”NKエージェント)を見つけて、面接に訪れる。 NKエージェントのドアを開けると、目の前の壁には、普通・中級・最高級の3種類の棺が無造作に立て掛けてあった。

 社員は、社長佐々木生栄(山崎努)と事務員上村百合子(余貴美子)の二人だけである。

社長は、経歴書も見ずに即決で大悟の採用を決めた。

「どんな仕事か」と聞く大悟に、社長は「求人広告の“旅のお手伝い”は“安らかな旅立ちのお手伝い”の誤植」、「NKは納棺のNK」、「年収は500万円」と告げる。

大悟は、あっけに取られるが、仕事は引き受けることにした。 ただ、妻には冠婚葬祭関係の仕事に就いたとだけ話す。

(第三場面)

 晩秋の庄内平野を社長と一緒に駆け回る、新人納棺師大悟の日常生活が始まる。

 美人だと思ったらニューハーフだった青年、ヤンキーの女子高生、幼い娘を残して亡くなった母親、沢山のキスマークで送り出される大往生のおじいちゃん・・・等々

 様々な境遇の死と別れに向き合う内に、大悟も納棺師の仕事を徐々に理解を示すようになる。


         
                 (納棺師の一場面)


(第四場面)

 冠婚葬祭関係=結婚式場と勝手に勘違いしていた妻に、本当の仕事がばれてしまい、妻は「汚らわしい」と言い残して東京の実家に帰ってしまう。

大きなショックを受けるが、仕事に信念を持つ大悟は、妻が再び戻る日を気長に待つことにした。

(第五場面)

 庄内平野に春が訪れようとしている時、納棺師として充足感を持ち始めた大悟のもとに様々な知らせが届き、物語が進められていく。

 妻が懐妊し、大悟の仕事を理解し、納得して帰ってくる。

 大悟の幼馴染みの友人は、納棺師の仕事を嫌っていたが、銭湯を営む母親が急死し、大悟が請け負った納棺の仕事振りを見て、初めて大悟を理解する。

(最終場面)

 幼い頃に失踪した父の消息が、「港町で孤独死した」と30年振りに知らされた。

 再会を嫌がっていた大悟だが、周囲の人達の意見を受け入れて、棺を車に積み、妻と一緒に港町を訪れる。

 父の遺体に死化粧を施して、納棺しようとする父の手に小さな石が1個握られていた。

それは幼い日に、大悟にチェロを勧めてくれた父に、大悟が渡した石文だった。 石文とは、ギュッと握りしめて、その感触と重さから貰った相手の心を読み解くものである。



 改めて、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した理由を考えてみた。

1.葬儀と言う世界共通の儀式であるが、納棺師が死化粧を施して棺に納めるという所作が、欧米人には日本的で目新しく映った。

2.一見地味で触れ難いイメージの職業をテーマにしているが、劇画的でコメディタッチの画面を多く取り入れており、重苦しさが無い。 しかも、最後に親子の絆という世界共通の感動を与える場面が用意してある。

3.画面とストーリーが分りやすく、言葉(日本語)が分らなくても、画面を見ていれば内容が理解できる。



 最後に、ロケ地の山形県や庄内平野のことを考えてみた。

          
          (大悟がチェロを弾く月光川の河川敷)


 大悟の自宅(上山市)、NKエージェント(酒田市)、白鳥の飛来(庄内平野)、大悟がチェロを弾く河川敷(遊佐町月光川)、美香の帰郷の駅(庄内町)、街の銭湯(鶴岡市)など山形県の多くの市や町が、背景として効果的に使われていた。

 余談ではあるが、美香役の広末涼子が東京の実家に帰るために使った庄内町の駅・余目駅は、私が学生時代から今迄、故郷へ帰省したり、大阪へ戻る時に何時も利用してきた駅である。

 (H21.3.29)



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